知人は、日本を「龍国」と呼んでいる。
彼は在野研究者として
日本のルーツを深く洞察しています
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確かに地図を眺めると、日本列島は「龍」のような形をしているように見えるね。
この姿に「龍」を感じる人は、他にもたくさんいるだろう。
幼い頃の私は、天気予報で見る不気味な形を「首の長いキリン」に似ているように感じていたものだから、日本地図を指して「きりん地図」と呼んでいたのよね。
でも成長して知識が増えてくると、キリンより「タツノオトシゴ」みたいだと思うようになった。
その後、この国の気になる不思議をあれこれ追いかけているうちに、「まさにこの国は龍の国だったのだな」と思うようになっていた。
私の言う「龍」とは、いわゆる高橋克彦先生が著したような「龍vs牡牛」という、思想的な対立構造の中の「古い神さま」の話ではあるのだけど、列島の形までもが「龍」を感じさせているということにも感動している。
世界でも日本でも、西と東で龍の立場が逆転する
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でも、現代では「龍神」だの「牛頭天皇」だの、神さまの話はファンタジー。ご祭神に区別なく、今はどれもご利益をもたらすありがたい神さまたちでしかないのかもしれない。
イメージ画像はPhotoACサイト
spacemanさんの写真です
今年の
「辰」という文字は、十二の獣に充てる時に、架空動物の「龍」となった。
本来は方位や時間を示す記号だった漢字に、動物というシンボルを割り当てたのはおそらく、「黄道帯」がとりまく星座によって「獣帯」と呼ばれたことに影響を受けているのではないかと思う。
子→鼠・丑→牛・寅→虎・卯→兎・辰→龍・巳→蛇・午→馬・未→羊・申→猿・酉→鶏・戌→狗・亥→猪
といった具合だけど、なぜか干支の中で龍だけが空想の動物・・・いやしかし、大昔には実在したのに何らかの理由で消えてしまった可能性もないとはいえない。
十二支という概念は、太陽の軌道上にある12星座が1年を分けているのと同じ概念だ。
1年のうちに、月の朔望周期が12回とちょっと訪れる。おおざっぱな太陽暦なら、10日の3回を朔望ひと月とみなして12回繰り返し、残りの「ちょっと」は太陽の運行に合わせて補正するだけでいい。
農耕用の太陽暦では月の運行は重要ではないから、相互のズレは気にする必要がない。中華では尭の時代に、臣下に命じて夏至と冬至を正したと史記に書いてあるし、最初の暦はオリジナルの太陽暦だったと思う。
エジプトの古い太陽暦では13か月目を補正のためにおいたらしい。かの地では、一年を決めるシリウスの輝く日という基準があるらしい。
ひと月を上・中・下の三つの「
指で数える10進法とは別に、1年の月数でもある12進法を用いることで、季節や方位の概念を割り算するのがたやすくなる。
エジプト歴と同じようにおおざっぱな「太陽暦」だったはずの中華の農耕歴が、月の運行をきっちり計り「潮の動き」まで示すこむずかしい「太陰太陽暦」に変わったのは、夏王朝中ごろに起こった動乱のためではないかと、史記を読んでいて気が付いた。
この動乱は異民族の王権簒奪が示唆されている。9個の太陽を打ち落とし、ひとつの太陽が政権を握って暦の掌握をするという、帝国文化のはしくれがこの時中華に押し寄せた気がしてならない。
この時の動乱では夏王朝が復権しているのだけれど、その後に興った商王朝は「太陰太陽暦」であり「文字」を持つ神殿の文明だ。インダス文明の謎ともリンクしてくる。
ちなみに、夏王朝の動乱の時に活躍した王の名前が「魏志 倭人伝」に登場してくる。その王の子が会稽(紹興酒の産地)に封じられ、卑弥呼の祖先となっていることが書かれているのだから、つまり入れ墨文化を持つ卑弥呼の民族は、まぎれもなく滅亡した越人の末裔であり、日本古来の民族ではない。
それが当時、会稽の東(東側は海なのでおそらく日本列島のどこか)にいる、と書かれている。日本の米は長江界隈からやってきているので、符合する。
太陰太陽暦はメソポタミアの高度な
天文学から生まれて各地に伝わった?
龍は、中華では天子の象徴となっているが、また別の世界では悪魔の象徴にもなっている不思な謎の生き物だ。
優れた天文学を持つ文明発祥のメソポタミアで滅びた、古い神が水の神であり「龍」であったという。
人の世界には、勝てば「官軍(善)」負ければ「賊軍(悪)」となる不文律がある。
「龍(シュメール神)」は、「牡牛(バビロニア神)」に負けて東へ落ちのびて夏王朝までを揺らし、やがて中華を掌握して商王朝の「神」となり、文字や
「天道」を問う「天の民」は、古い信仰対象を滅ぼすのではなく「神」に封じて祀ることで新しい世の中をつくってきただろうことが、後代に書かれた読み物から見ることができる。
中華では、天に仕える仙人の方が神さまよりも地位が高い。妖術を使える神さまは、ほとんど妖怪だ。
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そしてそれは、日本の古い神話とも一致している。古き信仰の王は、「天」の使者により「神」として祀られたのだ。
追われた「商」王朝の民族は「商人」となって流浪したらしいが、日本列島にやって来た痕跡もあるらしい。
古い夫婦神が、いつのまにか天族の神に主神の座を奪われながら敬われている背景は、龍の謎と無関係ではないのかもしれない。
Sacla画 ティアマトとマルドゥクの図の模写
シュメール文明をつくった神はバビロニア帝国の主神に
追いやられたことで悪となったのか?
2024年(令和6年 甲辰)元旦。
龍(辰)の年がまさに始まろうとするその日、龍が背ビレを大きく揺らして自己主張をした。
「俺さまの存在を忘れるんじゃない!」とでも言って威嚇しているのだろうか?
もしや、地震を起こすのはナマズじゃなくて、本当は龍だった?
大陸からはぎとられた日本列島の形に龍を見て、そんなことを考えた。
Sacla画 造物神サマエルのイメージ
キリスト教の創造神さまは人間に似ているらしいけど、ヘレニズム期に登場する造物神さまは百獣の王ライオンと蛇のあいのこのように書かれている。人間に恐怖を抱かせるシンボルが、中東の古い神だったドラゴンのイメージなのか?神さまなのに、この世の悪の始まりみたいに書かれているけど、善悪は思想や立場によって逆転するのよね。
かつてひとつになっていたらしい、パンゲアと呼ばれる大きな大陸だったものが再び分裂する動きの中で、逆方向でくっついてしまった陸の端っこと端っこが、更に海の端っこと端っこに追い詰められて揺れている。
2024年の元旦。龍の年の始まりに起こった、龍の国の大きな振動。
この偶然のタイミングで起こった地震は、自身の記録を綴り始めようとする私にとって、ただの偶然とは思えず、意味のあることのように思えてしまった。
甲辰の2024年は、龍と始まりを示唆する。今まで温めてきたことを形にするには縁起の良い年となるらしい。